図面管理のデジタル化が進む中、適切なファイル形式を選択することは業務効率化や情報の活用度を高めるための重要なポイントの1つです。図面には細い線が含まれている場合が多く、適切な解像度やファイル形式を選ばないと画質の劣化によって大事な情報が失われる可能性もあります。今回は、用途や業界別に図面保存のファイル形式について解説し、長期保存や業務活用のポイントも合わせてご紹介します。
1.図面のデジタル保存に用いられる主要なファイル形式の特徴
図面をデジタル保存する際に選ばれる代表的なファイル形式として、以下の3つが挙げられます。それぞれの特長と適切な用途を見ていきましょう。
PDF (Portable Document Format)
- 特徴:PDFは1つのファイルに複数ページを持つことが出来るため、図面に限らず文書を保存する目的でもよく用いられており、図面や文書データの保存形式としては現在の主流であると言えます。汎用性が高くOSを限定されずにほぼ全てのデバイスで表示することが出来ます。図面管理ソフトとも連携しやすく、スムーズな共有が可能です。
- 利点:ベクトル形式(線情報)での保存が可能で、拡大しても劣化しません。また、データ容量が軽く、多くのデバイスやソフトで対応しているため、社内外の共有がしやすい点がメリットです。
- 注意点:PDFは設計を「再構築する」仕事には向いていません。ベクトルデータを保持していてもCADデータとしての再編集は難しく、図面の詳細な加工を行いたい場合に適しているとは言えません。また、PDF形式はデジタル署名やセキュリティ設定も可能ですが、汎用性が高いだけに企業ごとに適切な管理が必要です。
TIFF (Tagged Image File Format)
- 特徴:TIFFはPDFと同様に1つのファイルに複数ページを持つことが出来、保存形式としてPDFが主流となる以前は多くの場面で用いられていました。主に高品質の画像保存に使用されるファイル形式で、カラーや白黒にかかわらず、様々な圧縮方式を選択でき非圧縮でも作成できるため、画質を維持したままの保存も可能です。
- 利点:24ビットカラー【1677万色】以上の色数でも保存でき、文化財等のデジタルアーカイブに用いられ、品質重視の保存に向いていると言えます。可逆圧縮も選択できるので劣化せず、長期保存にも向いています。
- 注意点:高品質画像はファイルサイズが大きくなりやすく、管理コストや保存容量の負担が増えます。透過や朱書きなども対応可能ですが閲覧するにはソフトウェア依存があるため、データ共有や閲覧ソフトにも工夫が求められます。
CADファイル (DXF 、DWGなど)
- 特徴:CADデータのファイル交換フォーマットであるDXF、CADソフトで大きなシェアを持つAutoCADで使われるDWGに代表されるCADデータは、設計する際に作成されたデータであるため線の情報や寸法といった設計情報が正確に保存できます。
- 利点:CADデータとして編集や加工ができるため、設計や施工の変更が発生する様な場合に最適です。詳細な情報が保持されるため、特に製造業や建設業のプロジェクトでは、CADデータでの管理が推奨されます。
- 注意点:CADデータの活用には専用のソフトウェアが必要で対応できる環境が限られるため、情報共有を目的とする場合には適しているとは言えません。また、ファイルサイズが大きくなる場合があるため、保存容量や共有方法に注意が必要です。
2.目的・用途別ファイル形式選びのポイント
長期保存・アーカイブ目的
- 最適フォーマット:TIFF、PDF/A
- 理由:長期保存には、将来的にも汎用性が見込めるファイル形式が理想的です。
TIFFはマイクロソフトとAldus(アドビに合併)により開発され、PDF/Aは長期アーカイブ用の国際標準であり、文書の改変が制限されているため信頼性が高いです。
社内外での迅速な共有・閲覧目的
- 最適フォーマット:PDF
- 理由:PDFは互換性が高く、多くのデバイスで閲覧可能なため「誰でも読める便利さ」で大活躍のため、メールやクラウドでの共有に適しています。また、必要に応じてパスワード保護なども設定できるため、セキュリティ面でも外部とのやり取りに安心です。
保存後も設計データの修正や加工が必要な用途
- 最適フォーマット:DXF、DWG
- 理由:保存後も将来的な設計変更や修正への対応が求められるのであれば、設計情報をそのまま保持しCADソフトで編集ができるファイル形式で管理する必要があります。CADデータとしての保存は図面情報の保護にもつながります。
3.デジタル保存で抑えるべきポイント
図面をデジタル保存する際には、ファイル形式の選択だけでなく、以下のポイントにも注意を払う必要があります。
データのバックアップとセキュリティ管理
デジタル化された図面は企業にとって貴重な情報資産です。定期的なバックアップや、アクセス権限の管理、パスワード保護、さらには暗号化を施して、情報漏洩や災害によるデータ消失のリスクに備えることが必要です。
データベースの導入と検索性の向上
大量の図面データを効率よく管理するためには、ファイル名やメタデータ(データの内容や構造を説明する情報)を整備し、データベースで整理すれば、検索もスムーズにできます。キーワードで検索すれば、図面を必要なときに素早く取り出せるといった環境が整います。
フォーマット変換と適切なソフトウェア選択
図面の用途変更や、異なる部署とデータを共有する際にはファイル形式の変換が必要になることがあります。変換時に、元の解像度やデータが損なわれないよう、変換する際のソフトウェアの選定も慎重に行うと良いでしょう。
4.図面管理におけるファイル形式選びのまとめ
図面管理においてファイル形式を正しく選ぶことは、デジタル保存の効率化や品質保持のために非常に重要です。これを間違えると、データが「別の言語」に変わってしまったり、画質が劣化したり…などといったトラブルに見舞われてしまうかもしれません。以下のポイントを抑えることで、業務の円滑化と情報資産の保護が実現できます。
- 長期保存には、TIFFやPDF/Aといった長期利用が可能な汎用フォーマットが推奨されます。
- 共有・閲覧が主な目的であれば、互換性に優れたPDFが最適です。
- 設計・製図業務などでの編集が必要な場合には、CADソフト対応のDWGやDXF形式が有効です。
図面のデジタル化を行う際は、自分の業務に合ったファイル形式を選択して、スマートにデジタル保存を進めましょう。
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