
会社に眠る情報資産を掘り起こそう ― #01 情報資産って何? ―
書庫の契約書や設計図面、マイクロフィルム、DVDやHDDに保存されたデータ。会社には、まだ十分に活用されていない情報資産が数多く眠っています。
こうした情報は、保管しているだけでは本来の価値を十分に発揮できません。必要な人が、必要なタイミングで、必要な情報を使える状態にすることが大切です。
このシリーズでは、情報資産管理の考え方をもとに、文書電子化・図面電子化、OCR・AI-OCR、長期保存などを通じて「情報を未来へ残し、業務に活かす方法」をご紹介します。第1回は、情報資産とは何か、そして電子化を活用につなげるための基本を解説します。
情報資産とは?会社にある身近な具体例
「情報資産」と聞くと、顧客データや営業資料、設計図面、契約書などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。これらはいずれも、企業にとって価値のある情報資産です。
情報資産は、パソコンの中のデータに限りません。書庫にある紙文書や図面、マイクロフィルムに記録された資料、古いDVDや外付けHDDのデータも、業務を支える大切な情報です。

こんな状況に心当たりはありませんか?
- 必要な資料が見つからず、探すだけで長い時間がかかる
- 昔の図面が書庫にあるはずなのに、保管場所が分からない
- ベテラン社員しか資料の所在や内容を把握していない
- DVDや外付けHDDのデータを、今も読み出せるか分からない
- 紙資料が増え続け、保管スペースが不足している
これらは、情報が存在していても業務で十分に活用できていないサインです。「持っている情報」を「使える情報」に変える視点から、管理方法を見直してみましょう。
情報を保管するだけでは価値を活かせない理由
企業では、業務上の必要性などから、多くの文書や図面を長期間保管しています。しかし、時間の経過とともに「保管すること」が目的となり、必要なときに活用しづらくなるケースもあります。
例えば、「5年前の契約書を探してください」と言われたとき、すぐに取り出せるでしょうか。複数の担当者が長時間探し回るのであれば、保管場所や検索方法に改善の余地があります。
図面も同様です。過去の設計資産を再利用できれば業務の効率化につながりますが、紙のまま探しにくい状態では、「新しく作成した方が早い」と判断されることもあります。
情報は、必要なときに取り出して活用できて初めて、その価値を十分に発揮します。文書電子化や図面電子化を検討する際も、保存後にどう探し、誰がどう使うのかを考えることが大切です。
なぜ「活用できない情報」が増えるのか
情報が活用しにくくなる理由は一つではありません。長年の業務の積み重ねによって、次のような課題が生じます。
- 保管場所の分散:紙文書や電子データが部署ごとに管理され、全体像が分からない
- ルールの不統一:ファイル名やフォルダー構成が人によって異なる
- 紙と電子データの混在:どれが最新の資料か判断しづらい
- 媒体や規格の変化:保存媒体の劣化や再生機器の不足で、読み出しに不安がある
- 管理の属人化:担当者しか資料の所在や管理方法を知らない
こうした課題が重なると、「あるはずなのに見つからない」「探すより作り直した方が早い」という状況が生まれやすくなります。紙をスキャンするだけでなく、整理方法や運用ルールまで見直すことが改善につながります。
情報資産管理とは?目指したい状態
情報資産管理というと、「文書を整理すること」や「電子化すること」をイメージする方も多いでしょう。もちろん、それらは重要な取り組みです。
そのうえで目指したいのは、会社の情報を将来にわたって適切に保存し、利用する権限を持つ人が、必要なときに活用できる状態を維持することです。
- 必要な資料を、文書名・日付・キーワードなどで検索できる
- 過去の図面を、設計業務や保守業務で再利用できる
- バックアップや分散保管により、災害や機器故障に備えられる
- 担当者が変わっても、資料と管理方法を引き継げる
- 保存媒体を更新しても、継続してデータを利用できる
重要なのは、「活用」を前提に、保存・検索・共有・保護の仕組みを整えることです。共有のしやすさと、個人情報・機密情報の適切な取り扱いを両立させましょう。
文書電子化・図面電子化など、課題に合った方法
情報資産を活かす方法は、企業が抱える課題や資料の種類によって異なります。まずは「何に困っているか」と「電子化した後にどう使いたいか」を整理しましょう。
- 紙文書が多い → 文書電子化
- 契約書・報告書・帳票などをスキャンし、PDF等の電子データとして管理します。検索しやすいファイル名や分類もあわせて検討します。
- 大判の図面を探しやすくしたい → 図面電子化
- 大判図面を電子化し、図面番号・案件名・改訂日などの情報と結び付けることで、検索や再利用をしやすくします。
- マイクロフィルムの情報を活かしたい → 電子化と保存方法の検討
- 記録された情報を電子データに変換し、閲覧しやすい状態に整えます。原資料の保存方法も含めて検討します。
- DVDやHDDの読み出しが心配 → データマイグレーション
- データを新しい媒体や保存環境へ移行します。コピーしただけで終わらせず、移行後にファイルを開けるか、内容を利用できるかも確認します。
- 資料の中の文字を検索したい → OCR・AI-OCRの活用
- 画像に含まれる文字をテキストデータに変換します。全文検索や帳票の項目抽出など、目的に応じて処理方法を選びます。
長期保存では、媒体の選定に加えて、定期的な読み出し確認、バックアップ、保存環境の更新を続けることも大切です。
電子化・OCR・AI-OCRの違いと活用のポイント
「スキャンすれば、書類の中の文字もすべて検索できる」と思っていませんか。画像として保存しただけのPDFは、そのままでは本文の文字を検索できない場合があります。そこで役立つのが、OCRです。

電子化は「データにする」、OCRは「文字を読み取る」
文書電子化では、紙をスキャンして画像やPDFなどの電子データにします。OCR(光学文字認識)は、その画像に含まれる文字を読み取り、テキストデータへ変換する技術です。
OCRの結果をPDFにテキストとして付与すれば、対応するソフトで文字検索ができるようになります。帳票の項目を抽出して表形式のデータにするなど、入力作業の効率化に活用する方法もあります。必要な出力形式は、利用目的に合わせて選びましょう。
AI-OCRも、原稿に合うかどうかの確認が大切
AI-OCRは、AI技術を活用して文字認識や項目抽出などを行うOCRです。手書き文字や複雑なレイアウトへの対応を備えるサービスもありますが、対応範囲や読み取り精度は、サービスや原稿の状態によって異なります。
OCR・AI-OCRの認識結果は、必ず正しいとは限りません。かすれ、傾き、小さな文字などがある資料は、実際の原稿で試し、用途に応じて確認・修正する工程を設けましょう。
また、個人情報や機密情報を含む資料では、処理する環境やデータの取り扱いも確認が必要です。名称だけで選ぶのではなく、読み取り品質・確認の手間・安全な運用・利用目的をあわせて検討することが大切です。
情報資産の活用は、身近な資料から
最初から社内のすべての資料を電子化する必要はありません。よく使う資料や、探すのに時間がかかっている資料など、効果を確かめやすい対象から取り組む方法があります。

- 所在と量を把握する
どの部署に、どんな資料が、どれだけあるかを確認します。 - 目的に合わせて電子化する
閲覧が目的なのか、全文検索やデータ入力に使うのかを決め、スキャンやOCRの方法を選びます。 - 整理と保護のルールを整える
ファイル名・保存先・アクセス権限・バックアップの方法を決めます。 - 使いながら見直す
実際に検索できるか、引き継げるかを確かめ、更新や管理の担当者を明確にします。
電子化はゴールではありません。情報を探せること、読めること、適切に共有できること、そして業務で活用できることまで考えてこそ、情報資産の価値を引き出せます。
まとめ|情報を未来へ残し、業務に活かすために
企業には、多くの情報資産が蓄積されています。その価値を高めるには、適切に保存するだけでなく、必要な人が必要なタイミングで利用できる環境を整えることが重要です。
文書電子化・図面電子化やOCR・AI-OCRは、そのための手段です。資料の状態と活用目的に合った方法を選び、検索性、引き継ぎ、長期保存まで見据えて情報資産管理を進めましょう。
次回予告
次回は「書庫の段ボール、そのままにしていませんか?」をテーマに、紙文書を保管し続けることで生じる課題と、情報資産として活用するための第一歩を解説します。
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