

この記事の要約
災害やパンデミックなどの緊急時でも事業を継続するBCP対策において、文書管理の電子化は極めて重要です。紙媒体に依存した管理体制は、オフィスの被災や立ち入り制限によって業務を完全に停止させるリスクを抱えています。対照的に、文書を電子化しクラウドで管理すれば、場所を選ばず安全に情報へアクセスでき、事業の継続性を高めることができます。本記事では、紙文書のリスク、電子化のメリット、そして無理なく始めるための「スモールスタート」の方法について解説します。
1. “紙にしかない”という理由で、業務が止まる未来を想像したことはありますか?
地震や水害、火災などの自然災害が相次ぐいま、文書管理のあり方が企業の命運を左右する時代になっています。2024年初頭の能登半島地震では、多くの企業がBCP(事業継続計画)の見直しを迫られました。
地震の影響で、インフラの断絶、物流の混乱、人員の確保など多様な課題が表面化しましたが、そのなかでも「文書管理」の課題が業務停滞を招いた一因となったケースが複数報告されています。たとえば、契約書やマニュアルなどの重要文書が紙で保管されていたため、被災現場に立ち入らなければ確認できなかったり、保管資料の一部が焼失したりといった問題が起きました。
そのような背景から、現在では文書の電子化やクラウド管理を取り入れ、どこからでも安全に情報へアクセスできる体制づくりが加速しています。文書管理は、単なる効率化ではなく、企業の“守り”のインフラとしてBCPの重要な一角を担う存在として再注目されています。
2. 紙書類に依存することで生まれる災害リスクとは?
紙書類だけに頼った業務環境は、災害時に大きな弱点になります。たとえば地震や火災、水害によってオフィスが損傷した場合、契約書や設計図、マニュアルといった重要な書類が消失してしまう可能性があります。
さらに、停電や建物への立ち入り制限が発生した際には、書類が無事でも“現場に行けなければ使えない”という課題もあります。これは、バックオフィス業務や経理処理などで顕著で、紙の帳票が使えないだけで取引が止まってしまうケースもあります。
また、コピーがなく原本のみというケースでは、情報のバックアップが効かず、情報漏洩や証跡不備による法的リスクも無視できません。このように、紙書類のままではBCP対策として不十分であることは明らかです。
3. 文書電子化・クラウド化がBCPに有効な3つの理由
BCP対策として、文書を電子化しクラウドで管理することは非常に有効です。その理由は主に以下の3点です。
1. どこからでもアクセス可能になる
クラウド上に保管された文書は、オフィスが被災しても自宅や他拠点からすぐに確認・共有できます。
2. セキュリティが強化される
多くのクラウドサービスはアクセス権限、ログ管理、自動バックアップなどの機能を持ち、紙では対応できないセキュリティ対策が可能です。
3. 検索性・共有性が向上する
膨大な書類の中から必要な文書を即座に探し出せることで、災害時の迅速な対応が可能になります。
単なるIT化ではなく、「業務を止めない仕組み」を築く戦略的な投資だといえるでしょう。
4. 実例に学ぶ:文書管理の差が被災後の明暗を分けた
2024年の能登半島地震では、文書管理体制の有無が、被災企業の業務復旧スピードに大きく影響しました。
- 紙で保管していた企業:オフィス損壊とともに業務が数週間にわたって停止。復旧に大きなコストと時間がかかりました。
- 電子化していた企業:すぐにテレワークに移行し、営業・バックオフィスともに業務を継続できた例もあります。
このような事例からも、文書管理は「普段あまり使わないから後回し」で済ませるものではなく、非常時に企業の信頼と事業を守る“保険”のような役割であることがわかります。
5. まずはここから!文書電子化のスモールスタート
文書電子化に取り組む際は、すべてを一気に行うのではなく、優先順位を決めて段階的に進めるのが現実的です。まずは以下のような業務の中核となる書類から始めましょう。
- 契約書類
- 業務マニュアル
- 顧客情報や取引記録
次に重要なのが、電子化後の保存先や管理ルールの設計です。クラウドストレージを利用する場合は、アクセス権限、フォルダ構成、バックアップ体制などを事前に整備しておきましょう。
スキャン作業はセキュリティや品質の観点から、専門業者への外注もおすすめです。また、「電子帳簿保存法」に該当する文書については、法要件を満たした保存方法を選ぶ必要があります。「スモールスタート」で始め、段階的に運用範囲を広げていくことで、無理なくBCP強化を図ることができます。
6. 弊社におけるBCP対策の実践事例
中小の印刷会社である弊社ですが、災害や緊急時でも業務を止めずに継続できるよう、日常的な文書管理からITインフラまで、BCPを意識した仕組みづくりを徹底しています。
まず、基幹となる業務ファイルや文書の共有については、VPN接続や法人向けの有償クラウドサービスを活用し、外部からも安全にアクセスできる環境を整備しています。一方で、各営業所に特有の顧客データや支給ファイル、納品用データなどの取扱いは、営業所内のNAS(ネットワーク接続型ストレージ)を使い、ローカルLAN内での利用に限定。情報の外部流出を防ぐため、UTM(統合脅威管理)機器やセキュリティソリューションを組み合わせて、二重・三重のセキュリティ体制を構築しています。
さらに、災害時を想定したBCP対策として、NAS運用にも以下の備えを講じています。
- RAID-1構成によるHDD冗長化:万が一HDD1が故障しても、HDD2への自動切り替えで継続稼働が可能です。
- 外付けHDDへの日次バックアップ:毎日のデータバックアップで、万一の損失を最小化します。
- 毎時レプリケーション:NAS-1に障害が発生した場合でも、NAS-2への自動切り替えで即時復旧が可能です。
- UPS(無停電電源装置)の導入:停電時でも安全にシステムを維持し、不意なシャットダウンや機器損傷を防止します。
このように中小の印刷会社である弊社においても、セキュリティ対策と同様に、災害・障害に備えるためのBCP体制を強化しております。今後は、拠点間でのNASレプリケーションによって、万が一の際にも他拠点でのバックアップ運用を可能にし、「事業が止まらない印刷会社」を目指して体制をさらに拡充していきます。
7. まとめ:いざという時のための“止まらない環境”づくりを今から
BCP対策としての文書管理・電子化は、「もしも」の時に業務を止めないための重要な備えです。
紙書類に依存していては、災害時に必要な情報にアクセスできず、事業継続に支障が出かねません。一方、クラウドベースの管理体制を構築しておけば、物理的な制約を超えてどこからでも業務が継続できます。
これはBCPだけでなく、テレワークやDX推進とも親和性の高い取り組みです。まずは「電子化すべき文書の選定」から始め、小さく始めて着実に進めることが成功の鍵となります。
未来を守る文書管理の見直し。今こそ、第一歩を踏み出しましょう。
文書管理やBCP対策を含めたDX推進は
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エイチ・エス写真技術では、今回ご紹介したBCP対策、および最新技術を常に取り入れ、お客様のDX推進と課題解決に努めています。
貴重な歴史資料を守る「マイクロフィルムの電子化」や、紙媒体の効率的な「電子化」「スキャン」サービスも、弊社の強みです。
DX推進でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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